静岡県環境衛生科学研究所

No.129

商品テスト情報

―黒豆茶―


 大豆は、東アジア特産のマメ科植物で、日本では、従来から豆腐、味噌、醤油等の原材料として利用されています。大豆には、多くの栄養成分や機能性成分が含まれ、その一つであるイソフラボンは植物エストロゲンとしての作用が知られています。特に、黒大豆は、ポリフェノールの一種であるアントシアニンも豊富に含むことから注目を浴びています。さらに、健康茶ブームにより、黒大豆等を原材料とした健康茶(黒豆茶)の需要が伸びています。
 そこで、市販の黒豆茶の機能性成分について調べてみました。


=== テストしたのは… ===

市販の黒豆茶等22銘柄です(1)。
角丸四角形: ◆	黒豆茶
 大豆の一種である黒大豆(黒豆)を焙煎しお湯で浸出させて、お茶のようにして飲むものです。
◆	イソフラボン
 大豆の胚芽部分に多く含まれるフラボノイド(ポリフェノールの一種)で、収斂味を有します。大豆イソフラボンには、ダイゼイン(De)、グリシテイン(Gle)、ゲニステイン(Ge)の3種のアグリコン(非配糖体)とその配糖体(D、Gl、G)、配糖体のマロニル化体(MD、MGl、MG)及びアセチル化体(AD、AGl、AG)が知られ、植物エストロゲンとしての女性ホルモン様作用や抗酸化活性等の生理活性が確認されています。また、イソフラボンを含む特定保健用食品について、平成18年5月に食品安全委員会から特定保健用食品としての一日上乗せ摂取量(アグリコン換算として30 mg/日)が出されました。
◆	アントシアニン
 水溶性の色素成分でフラボノイドの一種です。抗酸化活性とそれに基づく心臓疾患の予防効果等が知られ、熱や水、空気等により分解されやすいという特徴があります。黒豆では種皮の部分に含まれ、主なアントシアニンは、シアニジン‐3‐グリコシドです。
◆	植物エストロゲン
 植物に含まれる成分ですが、その構造が女性ホルモン(エストロゲン)と類似しエストロゲン受容体に結合することから、このホルモンに対し促進的又は競合的に生理作用を起こす物質です。
◆	抗酸化活性
 生命の維持に必要な酸素は、その一部が生体内で活性酸素に変化し、これが、体内の組織に障害を与え動脈硬化やガンの発生などの原因の一つになるといわれています。抗酸化活性とは、この活性酸素を捕捉・除去し、生体内の過剰な酸化反応を抑制する機能であり、日常摂取している食品中にはこの活性を有する成分(ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール等)が含まれています。
      商品の表示について

 調査した全ての銘柄の原材料名は、黒豆と記載されていました。また、一日上乗せ上限値はアグリコン換算値で示されていますが、イソフラボン含有量の表示については、総イソフラボン量として記載されているものや成分ごとに記載されているものなどまちまちでした。

    浸出液中のイソフラボン

 黒豆茶浸出液中のイソフラボン含有量を調べてみました(図1)。原材料表示から、黒豆の使用割合が低いと考えられる1銘柄を除き、浸出液にはイソフラボンが含まれていました。また、含有量については、大豆イソフラボンを添加しているものは、添加していないものの11.5倍含まれていました。一日上乗せ上限値(アグリコン換算)30 mg/日を準用すると、1500 mL飲用した場合、添加していないものでは約2.9 mg/日であり問題ない量でしたが、添加しているものでは約34.4 mg/日であり、上限値を上回りました。大豆イソフラボンを高濃度に含有する食品を利用する際には表示を確認するなどの注意が必要です。

1 イソフラボン含有量

     浸出液中のアントシアニン

 浸出液中にアントシアニンが含まれていた銘柄は、22銘柄中6銘柄のみで、これらは全て煎じるタイプの原材料が黒豆のみのもので、平均値は9.0 mg/Lでした。なお、清涼飲料水や黒豆以外の原材料が混合されている銘柄からは検出されませんでした。また、商品の包装にアントシアニンについて何らかの記載があるものは10銘柄ありましたが、そのうち浸出液にアントシアニンが含まれていたものは4銘柄のみでした。

     浸出方法による溶出量の違いは?

 煎じるタイプの黒豆茶浸出液の作り方は、商品の記載内容によると黒豆を煮出す方法(煮出し)、熱湯を注ぐ方法(注ぎ)、そして、煮出した後も黒豆を浸出液中に漬けたままにしておく方法(放置)等があります。そこで、これらの浸出方法による黒豆中成分の浸出液への溶出率を調べてみました(図2)。その結果、煮出した方が熱湯を注ぐよりも各成分とも多く溶出しました。放置は、煮出しに比べイソフラボンは多く溶出されましたが、アントシアニンは減少しました。また、イソフラボンの溶出率は低く、少なくとも7割以上は煮出した後の豆に残存していると考えられました。一方、アントシアニンは煮出した場合、95.3%が浸出液に溶出しました。

2 浸出方法による各成分の溶出率

     浸出回数による違いは?

 注ぎで黒豆茶を作る際には、2煎以上浸出させることがあります。そこで、浸出回数による各成分の溶出率を調べてみました(図3)。イソフラボンは、13煎目まで溶出率は47%でほぼ一定で、3煎分を合計してもその溶出率は16.7%でした。一方、アントシアニンは、1煎目で53.4%が溶出され、3煎目までの合計の溶出率は98.0%となり、ほぼ完全に浸出液に溶出しました。

3 浸出回数による各成分の溶出率

      浸出時間と溶出量の関係は?

 では、煮出しで作る場合、どの程度の時間浸出すれば各成分は溶出されるのでしょうか。浸出時間と溶出量の関係を調べてみました(図4)。商品包装には浸出時間は35分と記載されていましたが、その時間ではイソフラボンは十分に溶出されませんでした。一方、アントシアニンは、10分でほぼ完全に溶出しました。

4 浸出時間と各成分の溶出量の関係

      保存した場合の各成分の量は?
 黒豆茶浸出液を4℃で保存し、調製直後と48時間経過後の含有量を調べました。その結果、イソフラボンは調製直後の96.0%、アントシアニンは79.4%でした。浸出液調製後すぐに黒豆と浸出液を分離しておけば、アントシアニンの減少はないことがわかりました。
メモ: ◆◇煮出した後の黒豆には◇◆
イソフラボン等の様々な成分が含まれています。工夫して食べることもよいでしょう。
・	煮豆に(ひじきなどと一緒に…)
・	はちみつや砂糖をかけておやつ代わりに
・	すり潰してふりかけに・・・

メモ: ちょっとひとこと〜黒豆茶の作り方〜
[イソフラボンをより多く溶出させるには]
煮出す時間を長めにし、火を止めた後もしばらく黒豆は漬けたままにしておきます。熱湯を注いで飲む場合には2、3煎目も十分いただけます。
[アントシアニンをより多く溶出させるには]
煮出す時間を長めにし、火を止めたら黒豆を取り出します。注ぎで飲む場合には、1煎目に多くのアントシアニンが溶け出します。
□■□ まとめ □■□
角丸四角形: 1 現在、イソフラボン含有量の表示形態について特に決まりはなく、市販されている商品の表示もまちまちでした。消費者が各商品を比較しやすいように、アグリコン換算値又は総イソフラボンとしての表示に統一されることが望まれました。
2 イソフラボンは黒豆茶浸出液中に含まれ、その含有量は常識の範囲内での飲用では問題とならない量でした。イソフラボンをより多く摂取したい場合は黒豆茶を利用するのも1つの方法です。しかし、大豆イソフラボンが添加された商品を利用する際には、場合によっては過剰摂取の恐れがあるので、商品表示で含有量や摂取量を確認しましょう。
3 浸出液にアントシアニンが含まれていたのは、全て煎じるタイプの原材料が黒豆のみのものでした。また、アントシアニンに関する何らかの記載が商品包装にあってもほとんど含有していない商品がありました。消費者に誤解を与えないように表示されることが望まれました。
4 黒豆茶は、煮出した方が熱湯を注ぐよりも各成分とも多く溶出されました。特にイソフラボンは煮出した後の黒豆を浸漬したままにしておくとさらに多く溶出されました。
5 浸出液へのイソフラボンの溶出率は低いので、イソフラボンをより多く摂取するために、浸出後の黒豆を食べることもよいでしょう。
6 イソフラボンの溶出は穏やかで1〜3煎目までほぼ同程度の溶出率でしたが、アントシアニンは1煎目で5割以上が溶出されました。
7 各成分とも4℃、48時間の保存でも安定で、含有量に変化はみられませんでした。また、浸出直後に黒豆を取り除けば、アントシアニンの減少は抑えられます。
8 特定の食品ばかりを摂取するのではなく、バランスの良い食生活を心がけましょう。


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