静岡県環境衛生科学研究所

No.112

         商品テスト情報

             −100円のおたま−


 
最近、100円ショップと呼ばれる店が急増し、店内には、文具や台所用品、衣料品、食料品等様々な商品が並び、一通りのものがそろうほどです。特に台所用品は人気が高いようです。ところが、100円ショップで購入した商品について「みそ汁やカレーを加熱する際、鍋の中におたまを放置したところ、柄が溶けてしまった」という苦情が当所へ寄せられました。そこで今回は、100円の調理器具の中でも、特に長時間火にかけてしまうことの多いおたまについて、商品に問題があるのか、それとも消費者の使い方に問題があるのか調べてみました。

100円のおたまをテストしてみました

 100円ショップで販売されていたおたま5銘柄と、対照として380円のおたまを1銘柄購入し、品質や危険性などについて調べてみました。

◎ 表示は?

原料として使用する合成樹脂の種類については、全ての銘柄で表示されていましたが、一部の材料名が不明のものや、材質の表示がどの部分についてなのかがわかりにくいものがありました。また、合成樹脂の柄の耐熱温度が表示されていないものや、本体の耐熱温度が柄の耐熱温度と間違えやすいものがありました。鍋の縁に接触することを考えると、柄の耐熱温度の表示は必要だと思われます。

家庭用品品質表示法では、表示責任を明らかにするため、「表示者名及び住所又は電話番号を付記すること」としていますが、業者のマークはあったものの、住所や電話番号が記載されてないものがありました。

使用上の注意として、「火のそばに置かないで下さい」等の表示がないものがありましたが、商品の性質上この表示は必要であると考えられます。

◎ 外観・構造は?

同じ銘柄でも、金属製の本体部にばりがあるものや、ネジ部分の処理が不十分な製品が混ざっているものがありました。また、本体部分の傷が多いものや柄と本体の接合が不十分なものもありました。

1 テスト対象商品の表示内容

No.

材質

耐熱

温度(℃)

発売元の有無

使用上の注意

1

本体:ステンレススチー

柄:ポリプロピレン

2

本体:ステンレススチー

柄:ポリプロピレン

×

3

ステンレススチール

×

初めてご使用になる前に食器用洗剤などで洗浄してください。柄が熱くなりますので、加熱中の鍋の中やフライパン等の上にのせたまま放置しないでください。火のそばに置かないでください。

4

本体:66ナイロン

柄:ポリプロピレン

210

66ナイロン)

使用後は柔らかいスポンジなどを用いよく水洗いして下さい。火のそばには置かないで下さい。

5

66ナイロン

220

66ナイロン樹脂は水分を吸収しやすい性質上、特にカレーなどを調理した時、変色したり着色することがありますが、衛生上無害です。(食品衛生法適合品)火のそばに置いたり、加熱中のフライパン、鍋に放置すると変形することがありますのでご注意ください。

6

本体:ステンレス鋼

柄:ポリプロピレン

110

火のそばには置かないで下さい。樹脂部分に耐熱温度以上の熱が加わりますと、溶けたり、変形する原因になります。鍋などの中に入れたまま加熱しますと、柄が焼けて熱くなり、変形や火傷の原因になります。塩分を含んだ汚れを付着したまま放置されますと、錆の発生原因になります。使用後は汚れをきれいに落としてください。使用の際は、食器用洗剤をスポンジに付けて洗いすすいでください。

No. 1 5 100円のおたま、 No. 6 380円のおたま(対照品)

表中の△は、正式な社名がなくマークのみの表示だったことを示す。

 表中の−は、表示がなかったことを示す。


◎ 耐熱性は?

150160℃において、本体と柄接合部の部品との接着が弱くなり、すき間ができたものが1銘柄ありました。これは、接着剤が熱により溶けたことが原因であると考えられました。180℃では、4銘柄にハンドル部の変形がみられました。

◎ お鍋の加熱中、おたまの柄の温度は?

おたまを鍋の中にたてかけ、柄の最も鍋に近い場所の表面温度を測定しました。中火20分間では、最高温度が127.6℃になったものも1銘柄ありましたが、その他のものは100℃以下であり、柄が溶けたものはありませんでした。しかし入れたままにした場合、柄部分は素手で持つには危険な温度になることがわかりました。

一方強火10分間では、5分以内に3銘柄の柄が溶けましたが、これらの材質はすべてポリプロピレンでした。しかし、同じポリプロピレンでも溶けないものもありました。これらは、鍋と直接接触する部分に金属が使われているなどの工夫が施されていました。また、全体が熱に強い材質(ステンレススチール及び66ナイロン)で作られている製品は、柄が溶けませんでした。しかし、柄の溶解に関わらず、ほとんどの銘柄で23分後には100℃以上となっており、10分後には150℃以上に上昇したものもありました。強火では、短時間でも、鍋の中におたまを放置するのは危険だと思われます。

◎ 本体の形状は?

2 本体縁部の厚さ

銘柄

平均(mm

No.1

  0.576

No.2

  0.582

No.3

  0.586

No.6

  0.608

1)本体縁部の厚さ(2

本体が金属製のものについて、調べてみました。銘柄間に明確な差はありませんでしたが、対照品が他より若干厚いことがわかりました。

2)本体縁部の鋭さ

 本体の縁部が鋭く手が切れそうなものもあったため、テストテープを用いてテープが切れるかどうかテストしました。1検体、テープの全長の38.4%が切れるものがあり、手を強く当てた場合、けがをする恐れがあると思われました。

テスト方法:(社)日本玩具協会の安全基準(STマーク)の検査法を用いました。全長の50%以上が切れた場合、危険な鋭い縁部とみなすことになっていて、その基準では合格になります。


まとめ

合成樹脂の性質を知ろう!

特に家庭用品品質表示法の対象外のものについて、耐熱温度や業者名、使用上の注意などに多くの不備がありましたが、合成樹脂の性質や使用環境も考慮すると、家庭用品品質表示法に準じた表示が望ましいと考えられます。また、全ての銘柄で材質の表示があり、合成樹脂の性質から耐熱温度や使用上の注意などが予測できるので、わたしたちがこれらの知識を持つことも大切ではないでしょうか。

おたまを鍋の中に入れっぱなしで柄が変形しても、それはあなたの責任!

鍋中におたまを放置したときに、中火でも、本体に近い場所ではかなりの温度になりました。強火では、2分後でも全ての銘柄で100℃近い温度になり、柄の材質がポリプロピレンのものは25分後には変形してしまいました。また、火傷の危険があるため、火の強さや製品の形態に関わらず、鍋を火にかける際におたまを放置することは避けましょう。

手にとってよく見て買いましょう!

100円の商品の中には、金属の縁部が鋭利なもの、ばりや傷があるもの、本体と柄の接着が弱いもの等があり、対照品の380円の商品と比較すると作りが粗雑なものが多くありました。しかし、同銘柄でも問題のないものもあり、製品による差が大きいことがわかりました。購入するときには、適切に処理されているかどうか手にとってしっかり確かめましょう。



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