胸ときめかして

沼津市民劇場代表/土屋弘光


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 演劇は、「時代を、人間を映す鏡」とよく言われるが、 沼津演劇研究所(演研)のお芝居を見るたびに、その言葉を痛感する。 と言うのは、「演研」のお芝居は、常に、「時代の風」を感じさせ、 「時代の人間」を鮮明に浮き彫りにして見せてくれるから。

 聞けば「演研」は、今年、旗揚げ48年を迎えるという。 半世紀に近い演劇活動を、「ナイナイづくし」の中で、 よくもまァ続けてきたものだとその情熱と、 劇団員の人間的結びつき――絆の強さに感動、敬服させられる。 地域に根ざしての演劇活動、文化活動への貢献を思うと、 まさに静岡県文化功労賞に値する活動である。

 そして今回、「煙が目にしみる」(松田恒昌演出)である。 お葬式という人生最後のセレモニーに繰り広げられる家族の 本音の姿――火葬場からの家族の再生物語ともいうべき人間喜劇である。 誰もが逃げることの出来ない死、しかも火葬場が舞台というからおもしろい。

 どんな舞台になるか、どんな煙に出逢って、笑うのか、涙するのか、 意地悪婆さん以上のしたたかな婆さん、半ボケの母親に、 半分幽霊になった息子がどんな本音で立ち向かうのか、考えていくと興味は尽きない。 期待への心は弾む。おそらく、見終わった後、さまざまな話題が噴き出し、 改めて、お芝居を見ることの楽しさを実感することであろう。

 海を越えていく蝶を見つめるように、私は舞台を想像し、胸をときめかしている。

火葬場に 煙一筋 冬の蝶


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