国語科主催のホームルーム行事として百人一首大会を計画、実践した。静岡県東部は百人一首が盛んな地域ということもあり、百人一首大会を行う学校が多い。やり方は学校によって千差万別であるが、吉原商業高等学校では初めての試みとのことで、一学年を対象にクラス対抗の形式で行った。最大の問題は百人一首の札をどうするかという点にあるが、結論から言えば、最低三年は百人一首大会を継続するとの条件で、国語科の予算で購入した。当初、百人一首部のある高校から札を借りる、生徒から借りる、厚紙に書いて作成する、など考えたが、札がなくなったり混合したりする危険性や、雰囲気作りが大切さを鑑み、学校側と交渉の上、日本かるた協会に依頼し定価1250円(取り札のみ)で42組購入することができた。
読みは、雰囲気作りと円滑な運営を考え、教師が行った。百人一首CD使用も考えたがタイミングが難しく、やはり国語教師が読むことにした。
ロングホームルームを使用するということで、担任たちには協力を依頼。実際によく協力してくれた。また、生徒たちには、定期テストの際に百人一首を必ず二十点ずつ出題すること、クラス対抗行事であること、などを強調して雰囲気を盛り上げていった。また国語科の授業の際にも百人一首について触れるように心掛けた。
また、時期的に「旬」の時季を外さぬように一月上旬開催で企画した。
大会終了後、翌朝結果発表のプリントをクラス掲示した。クラス対抗意識を作り、また優秀者を発表し、来年度につなげるためである。本校生徒はこのような形で発表されることに非常に敏感であり、実際に翌年、上位者として発表された者たちは核となって百人一首大会の運営に協力してくれた。
○百人一首大会要項(対教師、生徒用)
日時:1月9日(金)第6時限 LHR時(50分予定)
場所:体育館
参加:一学年生徒全員(320名)
競技方法:出席番号に応じて42に分け、ちらし取り(取り札をばらばらに散らして、8人で取り合う)とする。1組から8組までの、同一出席番号の者が、1つの百人一首を取り合う。最終的には、クラスごとの集計を行い、クラス対抗の形式を整える。
ルール:1番最初は、読み手の発声練習のために、関係ない札を1枚だけ読む。序盤は下の句を二回読み、中盤からは一回読みとする。お手つきは自己申告で一回休み。
読み手:堀江教諭が行う。
競技時間:適当な時間を見計らい、「あと何枚」とコールをかけて、終了する。
集計:競技終了後、1組の生徒が中心になり、取った枚数を集計する。
○百人一首大会の進め方(対生徒用)
1 百人一首の世界では、礼儀が重んじられる。読み手が「読みはじめます」とコールをかけたら、「お願いします」と、皆にあいさつをすること。
2 一番最初に、読み手は、百人一首にはない歌を読むことになっている。「なにはづに咲くやこの花冬ごもり今を春べと咲くやこの花」。この歌を読んでから、スタートする
3 お手つきをした者は、自主的に1回休む。審判はいない。
4 どちらの取りか、わからない時には、札に近い人の取りとなる。
5 時間がないので百枚すべては読まない。あと何枚のコールをかける。
6 取った枚数をクラスごとに集計し、順位を決定し、表彰する。個人表彰はなし。
○百人一首の取り方(対生徒用)
・百人一首は、上の句で取るゲームです。どのくらいの歌を知っているかが、勝敗のポイントになります。しかし、初心者の皆さんは、まずは、10枚程度を確実に知っておくことから始めたらどうでしょうか。その10枚は、上の句で取ることができるようにしておくだけで、勝敗は大きく違うはずです。ただし、だれもがねらうような「たごのうらに」などの札は避けて、自分だけの得意な札を作ることがコツです。
・実は、百人一首の競技に強くなるためには、和歌をすべて覚えなくてもかまわないのです。たとえば、「むらさめのつゆもまだひぬまきのはに」の下の句は「きりたちのぼるあきのゆふぐれ」ですが、下の句が「き」で始まる歌は、この歌だけなのです。つまり、取り札(=下の句)の始めの文字を見て「き」で始まっていたならば、その札は「むらさめの」に間違いないのです。さらに上の句が「む」で始まる歌は、「むらさめの」しかありませんので、選手は、読み手が「む」という一文字を読んだだけで、「きりたちのぼる」という札を取ることができるのです。
○平成9年度百人一首大会結果と講評(クラス掲示用)
団体の部 結果発表
優 勝 1年7組 平均11.7枚
第2位 1年8組 平均10.5枚
第3位 1年1組 平均10.2枚
第4位 1年4組 平均 9.7枚
第5位 1年3組 平均 9.4枚
第6位 1年5組 平均 9.3枚
第7位 1年6組 平均 9.2枚
第8位 1年2組 平均 8.8枚
※各クラス、ベスト30までの者の平均枚数
個人の部 結果発表
優 勝 1年1組 井■ ■寿 22枚
優 勝 1年5組 ■原 健■ 22枚
優 勝 1年5組 塩■ ■子 22枚
第4位 1年4組 ■中 由■ 21枚
第5位 1年7組 秋■美由■ 21枚
※読み上げ枚数65枚中の取得枚数
○講評
・団体の部を見るに、思ったよりも差が付かなかった、というのが実感である。特に5〜7位はほんのわずかな差しかなかった。優勝した7組は、女子もさることながら、男子全体のがんばりが特徴的であった。第2位の8組は、7組とは対照的に、女性上位の得点分布のように見受けられる。第3位の1組は、国語教師の担任に義理を果たしたのだろう。大切なことだ。第4位の4組は、漢字テストでもいい位置につけていたが、国語科的な行事に対して、誠実に取り組んでくれ、うれしく思う。第5位の3組は非常に平均的な枚数で、いわばチームワーク型、それに対して第6位の5組は、個人技に優れた選手に恵まれていた。第7位となったのは、意外や意外の6組である。この結果の分析は担任の先生に任せるとして、今から来年度の百人一首大会で、6組がどう出るのか。また来年があるぞ6組の諸君! 残念ながら、最下位に終わった2組の諸君は、日頃のジェントルな態度が裏目に出たか。このような形式の対戦の時には、自己主張が強く、活発な生徒が有利であったということだ。
・個人の部を見ると、5組の二人が目につく。22枚取ったということは、自分の前にある札ばかりではない。他人の前の札まで手を伸ばして取ったということだ。よくがんばった。金■と塩■は、活発さと集中力という毛色が違った形での優勝となった。井■は耳がよいので、本格的に百人一首の世界に入ったら良い選手になることであろう。また上位5名の者に共通していることは、部活動などで活躍している生徒が多く、そのためなのだろうか、集中力がよく持続していた。たとえ百人一首といえども、何十分も集中できるということは、素晴らしい財産を持っていると言えよう。
○対戦を終えて
・そもそも静岡県は、全国的に見ても有数の百人一首愛好地域である。特に富士地区は、「田子の浦にうち出でてみれば〜」の歌ゆかりの市であり、小中学校でも百人一首大会が催される所が多い。このような環境の中で、今まで本校で百人一首大会が催されなかったということは、むしろ不思議であり、今回の大会は、本校における長い歴史の一歩となることであろう。
・読み手として、壇上から見ていると様々な場面が見える。普段文化的なこととは無縁だと思われていた人が大活躍をしていたり、女の子が、相手の陣地まで飛び跳ねて取りにいったり、最初は興味なさそうな態度でいて、次第に競技に入っていったり、引っ込み思案だと思われていた生徒が、皆をリードしていたり……。普段と違う君たちの側面を発見することができ、非常に嬉しく思う。
・今回は、第1回大会である。来年度は、この学年だけでなく、全校に広げることを目指してみたい。その時には、諸君が他の学年をリードしてくれることを念じてやまない。
・蛇足ながら、2月13日に行われる実力テストの国語の範囲にも百人一首は出題されている。記号や、穴埋めによる、答えやすい出題形式とするので、暗記しておくように。内容に関しては一切出題されない。
(文責 国語科 SH)